昼寝 ++







 「今日は本当に良い天気だべなぁ…。」
窓から外を眺めながら食器を洗っているチチ。
こんなに良い天気なのだから…悟空さとお出かけもしてみたいもんだべ。
あいにく今日はめずらしいことに悟空は家にいた。そうだ、悟空さに聞いてみようっ。
早めに洗い物を終えて、悟空のいるリビングへと向かう。
「悟空さー、なぁ、今日良い天気だろ?どっかお出かけしねぇ?」
ソファに腰掛けている悟空の背中に話しかける。しかし返事が返ってこない。
「?悟空さ?聞こえてる?」
不思議に思って近づいてみると なんと悟空は眠っていた。
「あんれまっ!ポカポカしてるから眠くなっちまっただか?まるで子供でねぇか。」
そう呟きながら悟空の隣に腰掛ける。
そして夫の寝顔を覗き込んでみる。
昼間だと言うのに夫はぐっすりと寝入っていた。
なんでかな?昨日の夜あんまり眠れなかったんかな?
そんなことを考えながらしばらく眺めていた。
「…なんかおらも眠くなってきた… ちょこっと寝ようかな…。」
悟空の肩にうっかかり、チチは眠りに落ちていった。





*





 「…ふわぁ〜…。オラ寝ちまったのか…?」
大きなあくびと共に目が覚めた悟空。ふと肩に温もりを感じる。
隣に目をやると自分の肩にうっかかって寝てる妻がいた。
あれ?さっきまで台所で洗い物してなかったか?
そんなことを考えながらチチに視線を落とす。
ぐっすりと眠っているチチ。肩にうっかかっている状態なので 今動いてしまえば起こしてしまうかもしれない。
そこで悟空は考えた。
そろそろ立ち上がりたいけど…起こしちまうだろうなぁ。 腹減ったけど…でもチチおきねぇとメシ食えねぇし…。
スースーと眠っているチチの隣で腕を組み考える悟空。悩んだ末に…。
よし、やっぱり起こそう。腹減ったもんな。
そう決断して再び妻に視線を向ける。
「おいチチ、起きろ、腹へったぞ。」
その小さな肩を少し揺らしてみる。がなかなか起きない。
…起きねぇな…。と寝顔を覗き込んでみる。
「…幸せそうな顔してら…。きっとメシ食ってる夢見てるんだな。」
起こしちゃ悪いよな、と思い、体制を戻す。
腹減ってるけど ま、このままでも…。


と、そのとき


…グゥ〜〜〜…。
腹の音が部屋に響き渡った。それと共に隣で寝ていたチチが起きた。
「…ん?今のなんだべ?」
まだ眠そうに目をこするチチ。なおも鳴り続ける自分の腹。
「…ップ。悟空さそんなに腹減ってたのけ?」
チチがクスクス笑い始めた。
「でけぇ音だなぁ。今のはオラもビックリしたぞ。」
自分の腹をさすってみる。
「腹減ってるなら起こしてくれればよかったのに。おらが寝てるの起こしちゃ かわいそうだとも思ったんだべか?」
「…うーん…まぁ、そうだな。」
「フフフッ。いいだよ。もうこんな時間だしな。結局どこもいけなかったけど…、 今からメシ作るだよ。ちょっと待っててな。」
そう言って台所に向かうチチ。


 窓の外を見ると 日が沈み始めていた。
…オラそんなに寝てたのか…。
台所からトントントンといつもの音が聞こえる。
冷えてきたせいか その肌寒さにちょっとした孤独感を感じた。
さっきまで隣から感じた温もりは 確かにあたたかかった。


いなくなって初めて気づいた。
オラ、本当はもうちょっと 二人でこうしていたかったんだ。


少し顔が熱くなるのを感じながら、台所から聞こえる音に耳を傾けていた。







<fin>








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