訪問 ++
あるのどやかな昼下がり。小さな孤島に小さめのジェット機が静かに舞い降りた。
「こんにちはー!!」
そこから出てきた女性の元気な声が響き渡る。
あれ?ブルマさん? と不思議そうな顔で家から出てきたのは亀仙流の胴着を着たクリリン。
「突然どうしたんですか?待っててください。今武天老師様を…」
呼びに行こうとするクリリンの足は ブルマの第二声によって止められる。
「クリリン君っ!孫君の家に遊びにいきましょうっ。」
*
「突然おじゃましてごめんなさいねー♪」
クリリンをつれて孫家におりたったブルマ。いつもとかわらない笑顔でチチにそう言った。
「全然かまわねぇだよっ。さ、どうぞ家の中に入るだ。」
チチのほうも笑顔で二人を出迎える。おじゃましまーす、と遠慮なく家に入っていくブルマの後ろから
すみませんね、とお辞儀をしながら入ってくるクリリン。
「どうぞくつろいでいって下さいだ。」
二人にお茶を出してそう言うと、チチは台所へと消えていった。
…結構いい所に住んでるんじゃない。と周りを見渡してつぶやくブルマ。
「あ。やっぱりさっきの音はおめぇたちだったのか。」
奥の方から白いタンクトップ姿の悟空が出てきた。
「あら孫くん。どこいたの?」
「風呂入ってた。」
今の時間に風呂なんか入ってたのかよ。というクリリンの問いの対して、
「チチのやつがさ、たまってる洗濯物洗うついでに
今着てるのも洗うから風呂入れってうるさくてさぁ。」
そういうことか…。周りを見渡してみると、確かにさっきまでいたチチの姿は見当たらない。
外で洗濯を干しているのだろうか。
「で、おめぇ達、何しにきたんだよ。」
ソファーにふぅと腰掛けてあいかわらずな言葉をかける悟空。
「それがさ、俺にもよくわからないんだ。ブルマさんがいきなりうちに来て…。」
そう言うと、クリリンは視線をブルマに向けた。
「別に何かしにきたわけじゃないわよ。あえて言うなら家を見に来たってとこかしら。」
家?と首をかしげる悟空。
「家って…この家をか?なんで?」
「別にいいじゃないのよっ。ただどんなところに住んでるのかな〜って思っただけよっ。」
ねっ、クリリン君。と同意を求めるブルマ。…まぁ確かに気にならなくもないですけど…。と
クリリンは曖昧な返事を返す。
「結構キレイな家よねっ。この家どうしたの?」
ブルマが悟空に問いかける。
「牛魔王のおっちゃんが建ててくれたんだ。二人で住む新しい家が必要だろうって。」
結婚してすぐにパオズ山にこの家を建てたそうだ。それを聞いてクリリンはため息をつく。
「はぁ…。いいよなぁ悟空…結婚生活って楽しいんだろうなぁ〜。」
うらやましそうに嘆くクリリンの言葉を聴いて 悟空はう〜んと腕を組んで考え込む。
「そうかなぁ…。オラそうは思えねぇけどなぁ…。」
え?と悟空を見返すクリリン。
「だってさぁ、修行しすぎたり服よごしたりしたらチチのやつ怒るし、行儀がどうのってうるさいしさぁ。」
しかめた顔つきでそう言い放つ悟空。
「あんたそんなのあたりまえでしょっ。だいたいあんたの普通ってのが普通じゃないんだから。」
そんな説明をされてもわからない…といったように悟空は、んー…とうなっている。
と、突然外からガタガタッという音と共にキャーッという女の悲鳴が聞こえた。
「あら?今のチチさんの悲鳴じゃない??」
どうしたのかしらと心配そうにするブルマ。
「あぁ。多分洗濯物ほしててふみ台から落ちたんだろ。」
よくあることだというように悟空が答える。ちょっと、チチさんどこで洗濯物干してるのよ。
とブルマが問う。
「上のほうが乾きやすいからってわざわざ木に棒引っ掛けて干してるみてぇだな。」
ケラケラとそう言う悟空。妻が悲鳴を上げてふみ台から落ちたというのにこの態度はどうなのだろうか…。
「悟空、チチさん大丈夫なのかよ?」
「あぁ、大丈夫だろ。いつものこった。」
あいかわらず笑ったまま答える。
「ちょっと孫君っ!大丈夫なわけないでしょっ!!早く行って手伝ってきなさいっ!!。」
外を指差し悟空にそう叫ぶブルマ。 えーなんでだよ。という悟空のしりを蹴りながら
早くいくのよっ!と叫ばれては悟空も行かないわけにはいかない。
悟空はめんどくさそうに外へと出て行った。
*
「…悟空…もしかして 結婚生活つらいんじゃないかな…。」
ソファーに腰掛けたクリリンの その言葉に振り返るブルマ。
「あら。どうしてそう思うわけ?」
突き刺すようにブルマが言った。
「だってさ…俺結婚って、もっと楽しそうなもんだと思ってたし…それに悟空のやつ
あんまり幸せそうには見えないじゃないですか…。」
うつむきがちにそう答えるクリリン。…そうかしら。と外に目をやるブルマ。
窓からはチチと悟空の姿が見える。
『おい、チチ大丈夫か?』
『あんれ悟空さっ。おらを助けに来ただか?めずらしい。』
『ブルマがうるせぇんだ。』
『なんだべ、ブルマさに言われてきたのけ…。まぁいいだよ。残りの洗濯物もさっさと干しちまわ
ねぇと。』
『また木の上にほすんだろ?オラがしてやろうか?』
『あんれまっ!悟空さ手伝ってくれるだかっ!どういう風の吹きまわしだべ。』
『なんだよ〜。どうせおめぇまた踏み台から落ちるんだろ?』
『なんだと!悟空さおらをバカにしてんのかっっ!』
…何を言っているかは聞こえないけど、どうせそんな感じの会話をしてるんでしょ。
窓の外に映る光景。頬をふくらませて怒っているチチを いつものケラケラとした顔で見つめる悟空。
いつもの笑顔だけど…私が見たこと無い顔だわ…。
部屋の中では相変わらずクリリンが暗い顔をして考え込んでいる。
「はぁ…悟空大丈夫かなぁ。」
「…クリリン君てば…あなたの目はふし穴なのかしら?」
一瞬 は?といった顔をされる。
だって クリリン君。 ちゃんと見て
ほら、あんなにも
二人は 幸せそう。
<fin>