星空 ++




「あれ?悟空さがいねぇ。」
そのことに気づいたのは 夕飯の後片付けを終えてリビングに戻った時。
さっきまでくつろいでいた悟空の姿が見当たらない。
こんな夜遅くに修行に行くわけねぇよなぁ と悟空を探し始めるチチ。
風呂場にもトイレにもいる気配はない。
 家中探しても見つからなかったので仕方なく外に出てみる。
「...わぁっ!」
外にでて真っ先に飛び込んできたのは 夜空一杯に広がる数億個もの星。
「すごい星...っ キレイだべ...っ!」
幸い今は夏だから寒くない。ひんやりしてちょうどいい気温だった。
しばらく星を見つめていようかと思っていると 上から声がかかった。


 「あれ、チチじゃねえか。おめぇも外に出てきたのか。」
なんと悟空は屋根の上にいた。不思議そうに自分を見下ろしている。
そんな所さいたのけ...と自分も屋根の上に飛び上がる。
 「悟空さ家の中いねぇから どこにいったかと心配したんだべ。」
悟空の隣に座り一緒になって星を見上げてみる。
「いやわりぃな。なんか外が明るかったからよ。」
ヘヘヘ と笑いながら答える悟空。
悟空さも星を見上げるときがあるんだべな。とおかしそうに笑うチチ。


 自分の隣で笑うチチを見て自然と笑みがこぼれる。
結婚してからそんなことばかりだ。チチが怒っていても笑っていても心が満たされているような 感覚があった。 しかもそれは チチに対してだけであると 少なからず悟空は理解していた。
ふと 自分達が結婚したときのことを思い出した。


『アイシテルって何だ?』
『アイシテルってこういうことだべ。』
そう言って自分の頬に口付けたチチ。
さっぱりわからねぇ。あの時はそう思っていた。
...今もわからねぇけど...。
そんなことを考えながらちらとチチを見る。
空を見上げるチチの黒い瞳には 無数の星がうつっていた。
月の光だけに照らされる彼女の顔。暗くて輪郭と目以外ははっきりとは見えなかった。
すいこまれそうな横顔に 悟空は目をそらすことができなかった。




 「...悟空さ?どうした?」
しばらく見つめていると それに気づいたチチが聞いてきた。
「あ...いや、なんでもねぇよ。」
「わかっただ!悟空さおらに見とれてただな?」
「ははっ 暗くて見えねぇよ。」
なーんだ。と残念そうな顔をされる。しかし悟空は内心ギクリとしたのだ。
悟空はチチから目をそらし空に視線を戻した。


クシュン...と小さなくしゃみが聞こえた。
「おめ 寒いのか?」
「さ、寒くねぇだよ。」
ニコリとそう自分に言うチチ。それを見て心臓が跳ね上がる自分。
胸をおさえてチチに笑いかける。
「そろそろ帰ろうぜ。オラねみいや。」
「んだな。もう遅いし。寝るべ。」
「おう。」


そして二人は家の中へと入っていった。




<fin>








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