[PR] 医師 バイト 恋人繋ぎ









恋人繋ぎ ++







駅の前の広場で待ち合わせをして
映画を見て ショッピングをして
公園のベンチで話をして
帰りは仲良く手を繋いで送っていこう。


これが僕のデート計画だった。
紙に日程、時間を書いて 頭の中で何度もシミュレーションをして。
完璧な計画だった。
しかし。それが彼女、ビーデルさんの一言によって全て崩れ去るとは。


「あたし、ピクニックに行きたいわ。」
さぁ出かけようとしたその時に なんとビーデルさんはパオズ山の僕の家までやってきたのだ。
「…ピクニック…ですか。」
街にいくつもりで着ていた黄色いスーツ姿で玄関に棒立ちする。
「そう。暖かくなってきたし、山に行けば、花とか沢山咲いていそうじゃない?」
でもその服装はマズイわね。と ビーデルさんは一言付け足した。
じゃ、着替えてきますから。と言って僕はドアを閉めた。





歩いて行きたいというビーデルさんの願望でパオズ山からそう遠くない山を二人で登る。 子供の頃、よく走り回っていたこの山は 確かにこの季節になると 色とりどりの花が咲き乱れる。
途中にはイチゴや林檎などの木の実を見つけて 取って食べる。
丁度良い大きさの岩を見つけて腰掛けた。
森の匂いや花の匂いをビーデルさんは気に入ったようで 嬉しそうに話している。
そのうち日は暮れていき 空は夕焼け色に染まった。


「ビーデルさん、そろそろ帰りますか?」
辺りを見渡して彼女に言った。
「そうね。もう帰らなくちゃね。」
寂しそうに空を見上げて 僕達は山道を歩き出した。


待ち合わせは 駅のかわりに自分の家。
映画のかわりに 山に咲く花。
ショッピングのかわりに イチゴや林檎。
ベンチのかわりに 山の岩。


自分のデート計画からかけ離れたこの一日を振り返ってて苦笑いを浮かべる。
ビーデルさんには とても叶わない。


「…ビーデルさん。手、繋ぎませんか?」
最後の計画だけは意地でも実行してやろうと 答えも待たずにビーデルさんの手を握る。
あ、という小さな声と共に 彼女の体は僕のほうへ引き寄せられた。
「このまま送っていきますよ。」
終わり良ければ全て良し。これで計画は失敗には終わらないだろう。
「…うん、でも、悟飯くん。」
少し頬を赤らめて ビーデルさんは繋がれた手を離した。
もしかして、イヤだったかなと不安を感じたが それは無駄な感情だった。
「こうじゃなくて… こう。」
空いた手で僕の手を握り もう一つの手と絡めるように繋いだ。
お互いの指の間に指が入り より密着した手のひらの熱を感じて 僕の心臓ははねあがる。
「ね?この繋ぎ方、知ってるでしょ?」
まだ赤いままの顔を上げて 彼女は満足そうに笑った。





結局最後まで 僕はビーデルさんにはかなわないのだった。








<fin>
















●彼女のほうが 一枚上手という話。








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