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手料理 ++







おら達の家が出来た。二人で住む 新しい家。
「うわぁ…!キレイだべ…!!」
山や川に囲まれた大きな大きなパオズ山に ポツリと建った丸いドーム型の家。
そこに取り付けられた『寿』と文字が施されたドアを開けて、期待一杯に入ってきたチチは歓声を上げた。
「悟空さっ。ここが、おら達の家だべ!ひっろいなぁ!」
嬉しさで興奮していたチチは あちらこちらの部屋を回っては いちいち喜びに満ちた声を上げた。 対する悟空はというと。はしゃぎまわるチチとは反面、ただ玄関に立って呆然と回りを見渡していた。
「…ひっれぇ―…。」
玄関に入るとすぐ目の前には大きなリビング。中でも目立つのは その真ん中に作られた巨大なテーブルである。
未だパタパタと走り回るチチをよそに 悟空はテーブルへと近づき 椅子に座って また回りを見渡した。
今までちゃんとした家に住んだ事といえば このパオズ山で祖父である悟飯と生活していた時と、亀仙人の元での修行の時のみである。考えてみればここ5年ほどは 森に住んでみたり 神様の神殿に住んでみたりと 定まった家には住んでいなかった。 決まった家に住むなんて、退屈で窮屈なだけかと思っていたけれど。
「…結構 居心地いいなぁ〜。」
ダラリと座ったままテーブルに伏せてみた。まだ一度も使っていない新品のテーブル。
亀のじいちゃんちのテーブルは食い物の臭いばっかりしたっけなぁ…。
「……はらへったなぁ。」
ポツリと言葉を漏らしてみる。ちょうど台所から出てきたチチが悟空に気付き、テーブルの側に近づいてきた。
「悟空さ腹へった?おらが飯、作ってやろうか?」
寝そべる悟空の顔を覗き込むようにチチが尋ねた。
その言葉にガバっと頭を上げる悟空。
「おめぇ、飯作れるのか?」
「何言ってるだ。おらの料理は死ぬほどうめぇだぞっ。」
だから、作ってやる。と言うチチ。悟空は目を輝かせてチチを見た。
「ホントか!?オラすんげぇ腹へっちまってよ!何か作ってくれよっ。」
部屋に響き渡る悟空の声。
同時に腹の音も大きく響き チチは驚きながらも 弾けるように笑った。
「あっはっは!!まっかせるだ!!」
チチはドンっと自分の胸を叩き自身たっぷりな表情で悟空に言った。
「すぐに作るから、旦那様はゆっくりくつろいでるだ。」
おうっ と悟空が返事をするやいなや チチはパタパタと台所へと消えていった。


退屈そうに椅子に座って台所からの音に耳を傾けていた時。
食べ物を炒める良い香りが部屋中を充満しはじめた。それに反応するように しきりに腹の音が響き渡る。
「…やばい…オラ、腹減りすぎて死ぬ…。」
食べる前に死んでは元も子もないと、必死で鼻を塞ぎ我慢していた。
「おまたせっ。悟空さっ!」
チチが多きな皿を抱えて台所から出てきた。やっと来た。
アレから何時間またされたのかと 壁に架けてある時計に目をやると
なんとまだ10分も立っていなかった。
「どうだ、早ぇだろ?」
皿をテーブルに置き 自慢気に腕を組むチチ。しかし目の前のご馳走に眼がくらみ
悟空には聞こえていないようだった。
「…これ… 食っても良いんだよな?」
料理をじぃっと見つめて悟空は言った。
「当たりめぇだっ。おめぇの為に作ったおらの手料理だべ。さぁ存分に喰うだよ!」
その言葉で スイッチが入ったかのように。いただきます と大声で叫んだかと思うと 凄い勢いで皿の上のご馳走に喰らい付いた。
悟空の手にはスプーンとフォーク。しかし 持ってても何の役にも立たないのでは…。 そう思えるほどに凄まじい食べ方だった。
「(そ…、そんなに腹減ってたんだべか…。)」
さすがのチチも驚きを隠せない。次々と無くなって行く料理を ただ傍で眺めていた。


* 


「はぁ〜!!食った!!」
数分後 残ったのは大量に積み上げられた皿の山と 悟空の大きく膨らんだ腹。
「よくこれだけ食べて…死なねぇなぁ…。」
「食べねぇほうが オラは死ぬんだ。」
満足そうに椅子に座って腹を摩る悟空。それをチチは嬉しそうに眺めていた。
「でも、おめぇの飯。死ぬほどうまかった。」
ニカッとチチに笑いかける悟空。そんな表情を見てチチは一気に赤面する。
まだ、この顔には慣れていないのだ。
「…よかったな。死ななくて。」
精一杯のテレ隠し。それでも悟空は。
「そうだな!死んだらもうこんなうまぇ飯、食えねぇもんなっ!」


たまらず顔をうつ向けるチチ。
嬉しすぎて涙が出そう。愛情のこもった手料理が 大きな幸せを運んでくれた。








<fin>
















●膨らんだお腹は 見ていて気持ちのいいものです。








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