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幼い頃、牛魔王の娘であるチチは 孫悟飯の孫である孫悟空に惚れて 結婚の約束をした。
孫悟飯の孫なのだから きっときつい修行でもしてるんだろうという父の言葉を聞いて
だったら自分もつよくなければいけないと 女であるにもかかわらず父からの厳しい修行を受けていた。
修行ではしっかりと手ごたえを感じていた。これだけ強ければいくら悟空だって適わないんじゃないかと
思うほどだった。
それでも悟空は一向に連絡をよこさない。そんな悟空に対して少なからず不安を感じずにはいられなかった。
「悟空さは修行でいそがしいだよ…おらのこと忘れてるわけねぇ」
ずっとそう自分に言い聞かせながら毎日を過ごしてきた。
17歳になったある日、父である牛魔王が思わぬ情報を手に入れてきた。
今度開催される天下一武道会に孫悟空は必ず出場するだろう というもの。
二度も大会で準優勝をはたした悟空は意外と有名人で、武道家の人に尋ねればほとんどが知っているほどだった。
いつまでまっててもしかたない… そう思ってチチは天下一武道会への出場を決意した。
会うだけなのだから別に出場しなくてもいいじゃないかと父は言っていたが
自分だってそうとう修行をつんだのだ。自分の実力でどこまでいけるかためしてみたい。
「チチ…本当におっとうも行かなくていんだか…?」
後ろから父、牛魔王に話しかけられた。
「いいだよおっとう。おらあんまり目立ちたくねぇもん。」
「だどもだなぁ おめ一人だけいかせるってのも心配でなぁ」
「心配しすぎだでおっとう。おら十分つよいんだ!だから大丈夫だ」
でも…と言う父をふりはらって チチは天下一武道会へと出発した。
恋焦がれていた 孫悟空に会うために。
*
「ここが天下一武道会場だべか…。」
チチがフライパン山を出たときはあんなに晴れていたのに、会場についたときは大雨だった。
そうにもかかわらず周りは人だらけ。あまり 賑やかな所に慣れていないチチは少しとまどっていた。
本当にここに孫悟空がいるのだろうか…。 しばらくすると雨が小降りになってきた。
ホッと胸をなでおろし受付をして会場に入っていった。
外もすごい人だが中もすごい…。周りは強そうな人でいっぱいだった。しかもほとんどが男。
男臭さが充満してる中でチチが不安を抱くのは当然のことだ。
「(どうしよう…みんな強そうだべ…おら初戦で負けちまうかも…)」
どう考えてもこの燃えるような男たちの気迫についていけそうもない。やっぱりこなきゃよかったかと思い始めていた、
その時 思いがけない言葉が耳にはいる。
「あれ?悟空おまえシッポは!?」
「!!」
悟空っっ 確かに今そう言った! あわてて声のした方に目をむけると、
そこには亀マークの入った山吹色の胴着を着た男が三人。
一人はいたって普通の人。もう一人はすこし小さくて髪がない。そしてもう一人は見覚えのあるつんつん髪の青年…。
まちがいない。あの男こそ自分が幼いころから恋焦がれていたあの少年だ。
あまりの変貌ぶりに思わず叫びそうになった。
(悟空さだっ!なっなんてかっこいいんだべっ!!)
チチはいてもたってもいられなくなった。早く悟空さと話がしてぇっ!
ドキドキする自分の胸を押さえながらゆっくりと悟空に近づき肩を叩いた。
「ん?」
「孫悟空…」
精一杯の笑顔で彼の名前を呼んだ。成長した自分の姿に 彼はどんな反応を示すのだろうか。 きっと驚くべ。
そんな期待とはうらはらに 彼の口からでてきた言葉はあっけなかった。
「だれだ?おめえ。」
一時の沈黙。
――え?悟空さ何いってるのけ?
軽いジョークだろうと笑い飛ばそうとしたが 彼の目つきはどうもそうではないようだ。不思議そうな目で顔をまじまじと
みつめてくる。
(……まさか本当に…!?)
信じられない。自分はあんなにも思い続けていたというのに この男は自分の顔すら覚えていないというのか。
わなわなと怒りがこみ上げてくる。
…〜〜〜〜こんの男は〜〜!!!
「バカッッッッ!!」
キッと睨んで思わずそう叫んだ。相手はひどくおどろいていた。迷惑そうに なんなんだよ、とぼやきながら。
なんなんだよ、はこっちのセリフだ。
自分は孫悟空だけを思って今までがんばってきたのに。孫悟空に会うためにわざわざ天下一武道会までやってきたのに
。当の本人は自分のことなんてこれっぽっちも覚えていなかった。
その姿を見つけてドキドキしていた自分が ばかばかしく思う。
あんな弱そうな奴 こっちから願いさげだべっ!!
決めた!おら絶対優勝してやるっ!!んで孫悟空を見返してやるだっ!!
フンッっと鼻息を散らしたあと、チチは闘争心を燃やして予選へと向かうのだった。
さっきまでの不安はどこへやら。