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情けない男 ++







「なぁ知ってるか?ミスター・サタンの娘のビーデル、あのグレートサイヤマンと付き合ってるらしいぜ」
「え?グレートサイヤマンって…あの正義の見方のか?」
「そうそう。なんでもミスター・サタンに唯一認められた男だとかっ」
「マシンガンに打たれても平気なんだってよ」
「ひぇ〜!!さすがミスター・サタンに認められた男は違うなっ」


…ここは正義の町、サタンシティ。
天下一武道会以来こんな噂があちらこちらから聞こえてくるようになった。特に噂の人物ビーデルが通うオレンジハイスクールでは 常にこの話題で盛り上がっている。
「ちぇ、ビーデル狙ってたのによっ。」
「相手があのグレートサイヤマンじゃ勝目はないよなぁ。」
「ていうかその前にビーデルにさえ勝てるわけないじゃん」
それもそうだよな。と一部の男達が騒ぎあっている教室をよそに 当の本人は はぁとため息をついて通り過ぎていく。 噂されるようになってから 自分はいつも話題の的だ。見つけられては質問攻めにあう現状には いいかげんうんざりしていた。といっても質問される内容は決まっている。
付き合ってるってホント?
グレートサイヤマンってここの生徒なんだって?
あんたたちどこまでいってんのよ?
そしてたいていの質問への返答はこうだ。


「さぁ。どうかしらね」


そんな中 気まずそうな表情でその様子を見ている青年がひとり。彼の名は孫悟飯。 ほとんどの人がビーデルの回りに集まるなか その輪からはずれて一部の人間は悟飯に集まっていた。


「…なぁ悟飯。お前いいのかよ。」
「えっ!? な、何がですか?」
「とぼけんなよ。オレたちはグレートサイヤマンの正体を知ってんだぜ。」
「アレ助けなくていいぉ?ビーデル迷惑そうな顔してんじゃん。」
「た、助けると言っても… 一体どうやって…。」
チラリとビーデルに視線を泳がせてみると、その横顔はゆがんでいて、 毎日付きまとわれるうっとおしさに彼女はよほどまいっている様子だ。
どうにかしてあげたいけれど・・・一体僕にどうしろと・・・。


「あれじゃあビーデルがかわいそうよぉ、グレートサイヤマン。」
友人の口から突然出てきたその名前に、悟飯はギョっとした。
「ちょ、ちょっと・・・。」
「なんとかしろよ、グレートサイヤマン。」
「や、やめてくださいよっ!他の人に聞こえたら・・・っ」
「「「えっ!?グレートサイヤマン!?」」」
「・・・;」
言わんこっちゃない。さっきまでビーデルを追いかけていた連中がすごい勢いでこちらに 詰めかけてきた。

「何々、今グレートサイヤマンって言った?」
「何か知ってんのあんたたち。」
「い、いえ・・だから・・・。」
押しつぶされそうな気迫にせまられながら、哀れ、悟飯は助けを求めるべく涙目で視線を泳がせる。 両隣にいる友人は共に外を向いておりシランプリ。遠くで茫然と立っていたビーデルは 自分の情けなさのためか呆れた視線を向けて来る。 もっともこれは自分がまいた種である。自分のためにも彼女のためにも、何か良い解決法を考え出さなければいけない。
なのにどうしてこう・・・。


「(肝心な時だけ頭が働いてくれないんだよ〜!!!)」


群衆の騒ぎ声に頭は混乱していくばかり。頼りにならない友人といえば、悟飯のほうがよく知ってるぜなんて余計なことを 言うもんだから、さらに自分の周りには人だまりがたまってゆく。よくもまぁこんなに集まったものだと、 解決法を出すべくフル回転しているはずの頭の隅では以外にも冷静な考えが浮かび上がる。
あぁ、どうしようどうしよう・・・・。


「この際だからはっきり言っておくけど。」


群衆が一斉に声のした方・・・ビーデルへと視線が向いた。頭を抱え込んでいた悟飯も、 なにごとかと同じ視線を送る。小さな体に似合わしくない大きな目を 誰かさんの如くキッと吊り上げて睨む先には 情けない男。悟飯は自分をにらんでいる事に気づくと、その目力にギクリと体を震わせ縮こまる。


「・・・あたしとグレートサイヤマンは、まっっったくそんな関係じゃないわよ!!」


ドスドスと刺さるような大声でそう叫んだあと、ビーデルはフンと荒い鼻息をおいて立ち去ってしまった。 ポカンとその場は少しの間静まったが、すぐに群がっていた衆たちは、さも興味がなくなったかのようにパラパラと散っていった。
なんだよつまんねぇ。
あの噂はなんだったんだよ。
じゃあ彼氏がいるってのはデマカセ?
口ぐちに聞こえてくるその言葉
縮こんだまま固まっている悟飯の周りにはいつのまにやら人ごみはさっぱりと消えて、元居た友人二人だけが残った、が。
「・・・なさけないわねぇ・・・。」
「・・・なさけねぇなぁ・・・。」
ハァと同時にため息をついて、その二人もどこかへ行ってしまった。
ただひとり残された悟飯はなおもその格好のまま、ビーデルが消えていった廊下を見つめていた。


「あぁ、僕って        なさけない・・・。」










<fin>
















●うちの男どもは睨まれてばかりだ。








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